子どもシェルター てんぽ

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子どもをとりまく現状

てんぽを利用する子どもたち

  • ▶ Aさん 17歳 女性
  • ▶ Bさん 17歳 女性
  • ▶ Cさん 18歳 女性
  • ▶ Dさん 18歳 男性
てんぽに最初の滞在者が到着した。彼女は天災の被害者ではないが家を失った。彼女に起こったことはニュースにはならないが、それでも彼女は失ったものを取り戻し、これから生きていくことを考えていかなければならない。まだ、未成年者の彼女ではあるが、人生のとても重要な選択と決定をしなければならない。私たちにできるのは、彼女が自分にあった選択をできるように手伝うことだけだ。 私たちの未来である子どもたちが、自分の希望を失わず、夢を実現したいと思う明日が来るように。子どもたちのためにてんぽはここにある。
8ヶ月と滞在期間記録を更新した女性が退所した。こんなに長期に渡り彼女が滞在するとは、本人はもとより、私たちも考えていなかった。シェルターという短期間滞在を想定した施設に、長期的に滞在する際の問題点や対応の違いなどを痛感させられる時間でもあった。彼女は現在も担当した弁護士との連絡はとっている。一人暮らしをしている彼女の日々の生活を皆が心配しないではおれない。  そういう彼女をみて、時々私たちは心配したり落ち込んだりするのだが、私たちに現在必要なのは、諦めないで彼女と見守り待つことなのだろう。
長年の両親間のDVと彼女自身への虐待で疲労困憊していた。  最初に会った時の彼女は、顔色も悪く伏し目がち。ため息をつく様に話をした。顔には殆ど表情がなく、正に凍り付いたという表現があてはまると感じた。これ迄の辛い体験を繰り返して聞かねばならぬ面接をしながら、早く終わらせたいと感じていた。1週間後に会った彼女はにこやかに笑っていた。顔色もよく、話し方も全く別人の様であった。  休むということが人にとってどれだけ大事なことか、痛感した瞬間だった。安心して休む空間を提供するのが現在のてんぽのできることなのかもしれない。
彼が到着した日の昼食はカレーライスであった。疲れているのに、見知らぬ人に囲まれて緊張した表情をしながらも、お代わりをしていた。直前には路上生活も体験していた。ある日、お腹が空いて「ひもじい」と漏らした私に「本当にひもじい思いもしたことないのに、そんなこと言うな。」と静かに彼は言った。 彼には、食事を作るスタッフの姿を見つめる瞬間が何度かあった。母親の姿をそこに見ていたのか、それはわからないが、幼いころからの複雑な家庭環境の中でも親を慕い、認められたいという気持ちを持っていたように感じられた。それなのに、自分の子どもを拒否してしまう親とはどういう存在なのかと考えるが、わからない。

私たちの思い

私たちの社会で、子どもたちは一人一人が尊厳ある存在として認められ、その存在自体がとても大切なものとして尊重されているでしょうか?
私たちのシェルターに辿り着いた子どもたちは、それまで大切にされなかった経験をたくさんしていました。児童虐待、いじめ、貧困、家庭崩壊、疎外と孤立・・・。そして、これらは、多かれ少なかれ、日本にいる子どもたちの置かれている現状なのではないかと思います。
現代の私たちの社会は、とてもストレスフルな社会です。核家族化が進み、ひとり親家庭も増加しています。雇用形態は変化し、不安定雇用が増加し、失業も増加しています。地域の連帯は稀薄化し、人々は孤立化しがちで、パソコンや携帯電話が人々を繋ぐツールとなっています。そんな中、頑張っているのに報われず、将来に希望が持ちにくい社会になっています。多くの人が息苦しさを感じているのではないでしょうか。そして、こうした社会のストレスは、大人にも子どもにも、様々な症状や現象となって表れてきますが、特に弱者である子どもたちには、それが顕著です。過労死や自殺、虐待やいじめ、犯罪や薬物依存、不登校やとじこもり・・・、どれも根っこは同じような気がします。大人も子どもも、余裕をなくし、孤立化する中で、自分も他人も大切にできない社会・・・これが現代の日本です。そして、政治は、これまで、このような社会で苦しむ子どもたちをネグレクトしてきました。しかし、子どもが大切にされない社会は、いずれ崩壊し、未来がありません。
私たちは、一人一人が、まず自分のできることを始める必要があります。自分と他人を大切にし、そしてそれを子どもたちに伝えること、てんぽはそんな思いで活動を続けています。